夏目友人帳 漆 舞台探訪

探訪日:各写真に記載

 2008年から断続的にとはいえ長きに渡ってアニメが放送されている「夏目友人帳」シリーズ、その第7期「漆」が2024年10月~12月に放送されました。途中に劇場版を挟んでいますが、テレビシリーズとしては7年半ぶりとなります。当サイトでは第3期が放送されていた2011年から本シリーズの舞台を紹介してきましたし、ほぼ同時期より、原作連載誌LaLaの35周年記念企画の一環として公式のタイアップも開始されたため、熊本県人吉球磨地方を中心とする各地が「夏目友人帳の聖地」であることはすっかりお馴染みかと思います。今シリーズでもそれは変わらずで、過去シリーズでも登場したお馴染みの場所だけでなく、新たに出てきた地点も多数ありました。放送からはだいぶ経ってしまいましたが、特定出来た地点はほぼ巡り終わったので、まとめて一気に紹介したいと思います。

黒肥地の県道33号線[多良木町]井王三郎神社[嘉島町]蓮花寺跡古塔碑群[多良木町]庄籠製菓舗[湯前町]天狗橋[人吉市]紅取橋・毘沙門堂[人吉市]田園風景[錦町・人吉市]晴山バス停[相良村]野々脇の祠[五木村]黒肥地地区[多良木町]立岩・魚背岩周辺[あさぎり町]坂本駅嘉例川駅・大隅横川駅豊島家住宅[愛媛県松山市]平成筑豊鉄道 第四今川橋梁[福岡県赤村]旧福田邸[佐賀県佐賀市]旧伊藤伝右衛門邸[福岡県飯塚市]旧藏内邸

黒肥地の県道33号線[多良木町]

 第7期の探訪は、夏目が自転車を漕いでいろいろなところを走るオープニング映像の風景から。最初の方に出てくる町中のカーブした道は、多良木町黒肥地地区を通る県道33号線の風景でした。劇場版で登場した場所の近くです。古い家がが建ち並んでいる光景が印象的でしたが、残念ながら県道の拡幅工事のため7期放送開始の2024年10月時点では既に取り壊されてしまっていました。

01


放送時点で既に景色が大きく変わってしまった県道33号線の景色。ロケハン当時の風景はGoogleストリートビューで確認できます。 (撮影日:2024.12.01)

ページ上部へ戻る

井王三郎神社[嘉島町]

 引き続きOP映像で、自転車を漕ぐ夏目の後ろに見える、畑の真ん中に鎮座するこんもりと茂った森は、嘉島町にある「井王三郎神社(いおうさぶろうじんじゃ)」がモデルです。名勝として知られる「浮島神社」のすぐ向かいにある小さな神社ですが、一面に広がる平坦な畑の中でそこだけぽつんと森になっているため、なかなか目を引く風景です。

02


井王三郎神社の森 (撮影日:2025.08.16)

 過去シリーズを見て人吉球磨を実際に訪れた方ならば、OP映像のこの景色を見て真っ先に思い浮かべるのは相良村の「雨宮神社」かと思います。実はそれも正解で、山に囲まれた神社の森を少し高いところから見下ろすような構図は相良大橋から雨宮神社を眺めた風景をイメージしたとのこと。この辺のお話は大森総監督からTwitter(X)で直々に教えていただいたので、間違いありませんw

03


相良大橋から見下ろす雨宮神社 (撮影日:2012.01.08)

ページ上部へ戻る

蓮花寺跡古塔碑群[多良木町]

 引き続きOP映像のカットから、小さいあやかし達が五輪塔からひょこっと顔を出すシーン。これは多良木町の「蓮花寺跡古塔碑群」をモデルにしたとのこと。こちらも監督のお墨付きありですw この五輪塔は鎌倉時代~室町時代(13世紀~16世紀)に作られた非常に古いもので、熊本県の重要文化財に指定されているそうです。

04


蓮花寺跡の五輪塔 (撮影日:2024.12.01)

ページ上部へ戻る

庄籠製菓舗[湯前町]

 ここからは第7期本編で登場した地点を、概ね出てきた順に、地域ごとにまとめて紹介します。最初は湯前駅近くの和菓子屋「庄籠製菓舗(しょうごもりせいかほ)」。3話で夏目がニャンコ先生や「犬の会」のあやかし達と行ったお菓子屋のモデルとなりました。夏目友人帳シリーズではこれまでテレビシリーズ1~6期+劇場版で相当な数の地点が登場していますが、湯前町内にある地点が作中に登場するのは意外なことに7期3話のこの場所が初となります。これでついに人吉球磨地方1市9町村全てに「聖地」が揃いました!

05


湯前町の庄籠製菓舗。写真は左右反転しています。 (撮影日:2024.12.01)

06


作中のようなベンチはなく、壁の様子も少し違うようです。 (撮影日:2024.12.01)

ページ上部へ戻る

天狗橋[人吉市]

 先ほどの場所とは反対に、第1期以降全てのシリーズで一度以上は登場している最も有名なスポット「天狗橋」。最早レギュラーキャラみたいな舞台で、「夏目友人帳の聖地」を最も象徴する場所と言っても過言ではないかと思います。第7期での初登場は意外と遅く第4話。気になって調べてみたところ、これまでのシリーズで最も遅い初登場だったようですw (各シーズンで天狗橋が最初に出てきた話数は以下の通り。1期:1話、2期:2話、3期:2話、4期:2話、5期:3話、6期:1話)

07


少し上流側から眺めた天狗橋 (撮影日:2017.01.15)

 この天狗橋ですが、2020年7月に球磨川流域を襲った豪雨災害において大きな被害を受けました。橋本体の流失は免れたものの、本作で頻繁に登場する左岸側(大柿地区側)の土手部分が大きくえぐられてしまったのに加え、橋桁もそのまま使い続けるには危険な状態になってしまったため、長らく通行止めとなっていました。架橋から50年以上が経過している歩行者と自転車しか通れない細い橋で、すぐ近くに新しい別の橋(紅取橋)も既に出来ていることから、一時は解体することも検討されたそうです。しかし前述のように「夏目友人帳の聖地」として多くのファンに親しまれていることから、地域の観光資源としての活用を期待され、可能な限りもとの姿で復旧されることになりました。流失した護岸の工事と、最も被害の大きかった左岸側の橋桁の架け替えなど5年に及ぶ工事の末、2025年11月15日に復旧を果たし、当日は多くの作品ファンなどを招いた「渡り初め式」も盛大に執り行われました。参考ニュース:アニメ「夏目友人帳」の聖地 熊本豪雨で被災した天狗橋が復活
 第7期の放送中はまだ工事の途中で、堤防部分の復旧は終わったものの、左岸側一番端の橋桁は撤去されている状態でした。ひとつの時代の記録としてこれはこれで意味があるのではと思うので、その状態で作中アングルと合わせた写真も掲載しておきたいと思います。

08


豪雨災害からの復旧中の様子。一番左端の橋桁は流されてしまったわけではなく、交換のために一時撤去されていた時期の様子です。 (撮影日:2024.11.30)

 そんな天狗橋は続く第5話でも登場しています。こちらは過去に撮った写真から近いアングルのものを探し出して合わせてみました。

09


(撮影日:2013.05.06)

10


いい感じのアングルの写真無かったので切り抜いて左右反転させたもので雰囲気だけ合わせてみました。昔のストリートビュー見ると建物の並びも概ね一致しそうですが、2025年現在は豪雨災害の影響もありだいぶ建て変わっているようです。 (撮影日:2014.08.16)

ページ上部へ戻る

紅取橋・毘沙門堂[人吉市]

 天狗橋のすぐ近くに架かる、車も通れる比較的新しい橋「紅取橋」も作中に登場しています。近くには「毘沙門堂」という五輪塔のある小さなお堂もあり、これもかなり前のシリーズからよく出てくる景色です。第7期では5話でちょびが宝物を探し歩くシーンのひとつとして、毘沙門堂の前から紅取橋の方を見る構図で登場しました。

11


毘沙門堂脇から紅取橋を眺める構図 (撮影日:2024.11.30)

12


こちらは毘沙門堂の五輪塔越しに見た構図 (撮影日:2024.11.30)

ページ上部へ戻る

田園風景[錦町・人吉市]

 同じく5話から。ちょびのために龍を探して夏目があちこち歩くシーンで登場した田園風景は、錦町の黒辺田野地区と人吉市の政井野橋付近の景色が元になっています。何の変哲も無い、畑や用水路が広がるだけの景色ですが、よく見比べると細かいところまでちゃんと一致します。過去シリーズでも同じ場所が登場しており、黒辺田野地区は第3期4話「幼き日々に」で「木の上のあやかし」が居た場所として、政井野橋は同じく3期1話「妖しきものの名」で夏目の通学路の途中としてそれぞれ初めて登場しました。2012年発売のムック(PASH!アニメーションファイル 10)でも紹介されています。

13


錦町の用水路 (撮影日:2024.12.01)

14


用水路のすぐ近く。作中よりかなり草が生い茂っていて分かりづらいですが、ガードレールの形や石積みなど等ちゃんと一致します。 (撮影日:2024.12.01)

15


こちらは政井野橋の脇 (撮影日:2012.08.16)

16


同じく政井野橋の、上の写真とは反対側 (撮影日:2012.08.14)

 ここからの2枚は確定ではなく、それっぽい気がする、というレベルでしかないのですが、7話で多軌の兄と夏目が出会ったお地蔵様に似ているといえないこともないものが錦町黒辺田野地区内にありました。石垣の角にあり、4本の石の柱で屋根が付けられているという特徴は一致します。用水路の場所からわりと近く、監督達がロケハン時に通過していても不思議ではない位置かとも思いますが、果たして…?

17


黒辺田野の集落内にあったお地蔵様。似てると言えば似てる?? (撮影日:2024.12.01)

18


交差点の片隅にあり、向いている方向も同じと言えば同じ…? (撮影日:2024.12.01)

ページ上部へ戻る

晴山バス停[相良村]

 話数戻って5話。龍を皆で手分けして探し回るシーンで、中級達が居たのは晴山バス停です。この場所も「続」OPで田沼が居るバス停として早くから知られていたため、聖地としても非常に有名ですね。

19


過去に出てきたのと同じアングルですが、7期放送後久しぶりに行ったので、ここでは最新の写真を掲載しておきますw (撮影日:2025.08.16)

ページ上部へ戻る

野々脇の祠[五木村]

 5話の龍探しのシーンでは国道445号線を晴山バス停からさらに山奥へ向かった先の、五木村野々脇にある小さな祠も登場しました。ここも「参」OPで登場しており、2012年のムックでも紹介されていました。

20


2012年のムック本に掲載されたのを受けて撮りに行ったときの写真。Twitter情報によると少なくとも2021年以降、中のお地蔵様は居られなくなっているようです。 (撮影日:2012.08.16)

21


出てきた後撮り直してないので、手持ちの写真で近いものを選んで無理矢理それっぽく切り抜いてみました (撮影日:2012.08.16)

ページ上部へ戻る

黒肥地地区[多良木町]

 5話で登場した場所はまだあります。多良木町黒肥地地区の黒肥地小学校裏手の道がこの回で初めて登場しました。位置的には劇場版で登場した黒肥地地区の町並みと、先ほど紹介した7期OPの蓮花寺跡との間あたり。ロケハン時に監督達はこの辺りを徒歩で巡っていて、その時使わなかった場所を今回使ったのかな、と予想しますw

22


黒肥地小学校裏手の道。柵とカーブミラーが特徴的です。 (撮影日:2024.12.01)

23


(撮影日:2024.12.01)

24


同じ場所から眺めた山並み。特定の山の形が完全に再現されているわけではない気もしますが、だいたいの雰囲気は伝わるかと。 (撮影日:2024.12.01)

25


(撮影日:2024.12.01)

26


(撮影日:2024.12.01)

 劇場版でも登場した黒肥地地区の住宅地にあるお地蔵様も12話で再登場していました。

27


劇場版でも登場した黒肥地集落内のお地蔵様 (撮影日:2019.08.31)

ページ上部へ戻る

立岩・魚背岩周辺[あさぎり町]

 5話ラストの松の木が生えた大きな岩は、あさぎり町の立岩がわりと似ている感じです。監督のツイートによると「色々な資料から創作した」そうですが、劇場版でも登場した場所なのでイメージのひとつとして含まれているのかもしれません。

28


あさぎり町の立岩 (撮影日:2024.11.30)

 立岩のすぐ近くにある「魚背岩」とその奥の橋は12話で登場しています。これも劇場版で登場した場所の別アングルですね。

29


この回の放送後に撮りに行っておらず、特徴である右端の小屋が写っていなくてわかりづらいのですが、この橋で合ってるはずです。 (撮影日:2018.11.11)

30


同じ12話の別カットもたぶんここ。川の中に所々草が生えていたり、1本だけ背の高い木が生えている様子がわりとしっかり一致します。 (撮影日:2018.11.11)

ページ上部へ戻る

坂本駅[八代市]

 12話で夏目が折り紙のあやかしに町の様子を見せようとあちこち歩き回るシーンではいろいろな景色が登場ますが、多くは具体的なモデルがあるのかどうか特定出来ていません。その中辛うじて特定出来たモノの一つが、古い木造駅舎のある駅前にバスが止まっていたこの景色。これのモデルは肥薩線坂本駅でした。これも劇場版で登場したのの別アングルですね。劇場版の聖地巡礼として訪問した際、たまたま駅前に産交バスの車両が止まっている風景を撮っていたのですが、なんか作中に出てきたアングルとほぼ一致していたのでそのまま掲載しますw
 なおこの駅を含むJR肥薩線八代~人吉~吉松の区間は2020年7月の球磨川の大水害で被害を受けたため長期運休中です。駅舎自体は無事なのですが、復旧工事の影響か、2025年12月現在、駅前広場の様子は若干変わっているようです。また駅前に乗り入れていた産交バスの路線も人口減少に伴い2023年10月を以て廃止され、八代市乗合タクシーに置き換えられてしまいました。そのため、このカットを再現することはできなくなっています。

31


産交バスの車両が停車している坂本駅前。現在では見られない光景です。 (撮影日:2018.11.10)

ページ上部へ戻る

嘉例川駅・大隅横川駅[鹿児島県霧島市]

 肥薩線には坂本駅以外にも開業当初の木造駅舎が残る駅がいくつかあり、地域の観光名所として知られています。第6話「廃駅・ふたつの輪」の廃駅のモデルになったのはその中の二つ、「嘉例川(かれいがわ)駅」と「大隅横川(おおすみよこがわ)駅」です。この回の演出を担当された大城さんのツイートによると、嘉例川駅をメインにしつつ、間口の広さなどは大隅横川駅の雰囲気を拝借したとのこと。両駅とも肥薩線開業の際同時に建てられたものであるため、建築時には同じパーツが使われた部分もあるなど、全体の雰囲気はとてもよく似ています。しかし、開業時に予想された利用者数に応じて改札口の幅を変えるなど、よく観察すると細部は駅ごとに異なっています。作中ではこれら駅ごとの特徴を混ぜたオリジナルの駅として描かれていました。

32


「廃駅」のモデルとなった嘉例川駅を正面から (撮影日:2025.03.28)

33


同じく嘉例川。駅舎概観は基本的に嘉例川駅をほぼそのまま使っていそうです。 (撮影日:2025.03.28)

34


駅舎内部の様子はパーツごとに嘉例川と大隅横川が切り貼りされた感じ。このアングルのうち、左側の窓口部分の時計より右側は嘉例川ですが、改札口は大隅横川のものです。 (撮影日:2011.05.03)

35


左側の窓口部分も、一番左端の切符売り場の窓口に○が着いているのは大隅横川駅の特徴を持ってきていると思われます。 (撮影日:2025.03.28)

36


こちらが大隅横川駅の写真。嘉例川駅より改札口の幅が広くなっています。 (撮影日:2025.03.28)

37


的場さんが座っていた椅子。これは嘉例川のものです。 (撮影日:2025.03.28)

38


駅舎入り口。これは多分嘉例川の方がモデル。 (撮影日:2025.03.28)

39


駅舎脇の窓から中を見た構図。嘉例川のものです。 (撮影日:2025.03.28)

40


嘉例川駅。先ほどの大隅横川駅の写真と比べると改札口の幅が狭いことが分かると思います。 (撮影日:2025.03.28)

41


嘉例川駅の時計。この写真は2011年に撮りましたが、その時は一致していました。しかし次に紹介するとおり、現在では別の時計になっています。 (撮影日:2011.05.03)

42


2025年撮影の嘉例川駅の時計。Twitterで駅を訪問された方のツイートを検索してみたところ、2024年3月頃までは古い方の時計が有ったようですが、4~5月頃には無くなっており、2024年6月ごろこの時計がかけられたようでした。放送の比較的直前というタイミングなのが残念… (撮影日:2025.03.28)

43


嘉例川駅のベンチ (撮影日:2025.03.28)

44


嘉例川駅の天井。照明器具が作中ではより簡素なものになっているのは廃駅っぽさを演出するためとのこと。右端に写る四角の中に丸い穴が開いている箇所はストーブの煙突跡とかでしょうかね? (撮影日:2025.03.28)

45


嘉例川駅入口 (撮影日:2025.03.28)

 作中の「廃駅」には駅のホームのすぐ先にトンネルが見えていますが、嘉例川駅、大隅横川駅ともにトンネルはありません。その情景は1988年に廃止された山野線(水俣~栗野)の写真を参考にしたと、先に紹介したツイートで大城さんが述べられています。トンネルはありませんがホームの、特に屋根と柱まわりは嘉例川駅がとてもよく似ていたので、いろいろ混ざっていそうですね。

46


嘉例川駅のホーム。作中のようにトンネルはありませんが、3月末に行ったら桜がきれいでした。 (撮影日:2025.03.28)

 なお嘉例川、大隅横川の2駅を含むJR肥薩線吉松~隼人の区間は、2025年8月に発生した大雨により被災し、2025年12月現在鉄道は不通となっています。代行バスは運転されていますが、平日のみで土日祝日は運休ですので、訪問の際はご注意下さい。このほか鹿児島空港発着の路線バスも利用可能ですのでご検討下さい。(参考情報

ページ上部へ戻る

豊島家住宅[愛媛県松山市]

 ここから先は人吉球磨地方から離れた場所をまとめて紹介します。
 夏目友人帳シリーズではこれまでも「古い時代に建てられた大きなお屋敷」がいろいろな回で登場していますが、「漆」でも実在のモデルが存在するお屋敷が数軒登場しました。一つ目は第3話「とおかんや」で、儀式の行われた雨沢さんの邸宅のモデルとなったのは、愛媛県松山市にある「豊島家住宅」です。江戸時代中期の1758年に、この地域の庄屋様の邸宅として建てられた大きなお屋敷です。「廃駅」の回と同じく演出と絵コンテを担当された大城さんがツイートされていましたが、田畑に囲まれた中にある大きなお屋敷というイメージがドンピシャだったので参考にしたとのことです。現在も個人の邸宅となっているため内部は非公開ですし、背景画を起こすに当たって実物とはいろいろ描き変えたそうですが、向かいの畑越しに見るとたしかに作中のイメージによく似た雰囲気だなと感じることが出来ると思います。

47


第3話「とおかんや」で雨沢邸のモデルとなった松山市の豊島家住宅 (撮影日:2025.05.02)

 建物自体も若干変更が加えられていますが、周囲の風景はもっと大きく改変されており、あまり一致はしません。塀の前の道路とさらにその脇を流れる水路になんとなく面影が見られる程度でしょうかね。

48


屋敷向かって右手側 (撮影日:2025.05.02)

49


その反対側。背後に山はないですが、左の水路の様子はわりと似てますね。 (撮影日:2025.05.02)

参考リンク:松山市ホームページ 文化財一覧

ページ上部へ戻る

平成筑豊鉄道 第四今川橋梁[福岡県赤村]

 夏目友人帳アニメシリーズで「お屋敷」と同じくらい頻出しているのが「鉄道」かと思いますが、今期もまた新たな鉄道関連聖地が増えました。第9話「儀式を阻む者」で一瞬写った、山の中の鉄橋を列車が越えていくシーンは、福岡県を走る平成筑豊鉄道田川線の「第四今川橋梁」が元になっていると思います。源じいの森駅から県道を歩いて5分ぐらいのところから鉄橋を見ることができるのですが、山の緑に鉄橋の赤が映えていてなかなかきれいな景色でした。このあと紹介しますが、9話と続く10話で出てきたお屋敷のモデルがこの路線が走るエリアからそう遠くない場所に実在していますので、その途中に寄ったとかあるのかもしれません。

50


平成筑豊鉄道 第四今川橋梁 (撮影日:2025.04.30)

 平成筑豊鉄道の車両はそれぞれ異なるカラーリングをしていますが、作中に描かれたのと同じ車両は実在します。平成筑豊鉄道のホームページに掲載されている「412号車(開業時カラー)」というのがそれにあたります。どの車両がいつ運転されているかは日によって変わるため、車両まで一致させた状態で撮影することは出来ませんでしたが、過去に夏目関係なく乗り鉄しに行ったとき、別の場所でこの車両を撮っていたので紹介しておきますw

51


作中と同カラーの平成筑豊鉄道412号車 (撮影日:2011.11.04)

ページ上部へ戻る

旧福田邸[佐賀県佐賀市]

 ここからの3箇所はいずれも第9話「儀式を阻む者」と続く第10話「約束の残る家」で登場したお屋敷とその周辺の風景のモデルです。夏目と名取さんが最初に訪れた「旧依島邸」のモデルとなったのは、佐賀市にある「旧福田邸」です。母屋の玄関周りが参考とされている程度で、お話の中で触れられた枇杷の木もありませんが、なかなか立派なお屋敷で見応えありました。現在確認できる範囲で佐賀県にある夏目友人帳のモデルとなった場所はここだけですが、福岡市方面や熊本市方面へのアクセスはそんなに悪くないので、周囲の歴史的建造物群と合わせての観光がてら寄ってみるのもアリかと思います。

52


依島さん家のモデルとなった佐賀市の旧福田邸の玄関 (撮影日:2025.04.29)

53


一致するのは建物そのもののみで、外からの様子は全く異なりました。枇杷の木もありません。 (撮影日:2025.04.29)

54


旧伊藤伝右衛門邸の応接間。ダイヤ型のステンドグラスが特徴です。 (撮影日:2025.04.29)

参考リンク:佐賀市歴史民俗館ホームページ

ページ上部へ戻る

旧伊藤伝右衛門邸[福岡県飯塚市]

 第9・10話のエピソードでメインの舞台となった三春のお屋敷とその周囲の景色は、福岡県にある2つの史跡がモデルになっています。そのうちの一つが飯塚市にある「旧伊藤伝右衛門邸」。明治から昭和前期にかけて筑豊炭田の開発で財を成した伊藤伝右衛門により建てられた大邸宅で、和洋折衷の様式を特徴としており、特にダイヤを象った欄間のステンドグラスは当時の技と贅を尽くしたこの建物の象徴のひとつとなっているようです。作中で使われたのもこのステンドグラスがある応接間で、途中的場さんと名取さんが閉じ込められた部屋がここをモデルとして描かれているようでした。

55


鏝絵が特徴的な長崎街道沿いの旧家 (撮影日:2025.03.31)

 三春邸、依島邸へ向かう道中の景色が数カット描かれますが、その中の一つは伊藤伝右衛門邸のすぐ近くにありました。白壁に動物の絵が描かれている建物がそれ。「鏝絵(こてえ)」というそうで、江戸時代中期から明治にかけて特に流行った技法とのこと。この建物や伊藤伝右衛門邸が建つ幸袋(こうぶくろ)地区は、江戸時代に小倉と長崎を結ぶ街道として重要だった「長崎街道」が通っているため古くから栄えていたそうで、当時を忍べるこのような旧家が現在に至るまで残っているそうです。(余談ですが、先ほど紹介した佐賀の旧福田家も長崎街道から1本入った区画に位置しています。なんとなく繋がりを感じますね。)

56


(撮影日:2025.03.31)

参考リンク:旧伊藤伝右衛門邸ホームページ飯塚観光協会 長崎街道歩こうマップ

ページ上部へ戻る

旧藏内邸[福岡県築上町]

 「漆」探訪記事で最後に紹介するのは福岡県築上町にある「旧藏内邸」です。9・10話のメイン舞台となった三春邸のうち、先ほど紹介した応接間と、夏目が儀式を阻むあやかしに出会った二階部分以外は全てこのお屋敷と庭園を元に描き起こされています。
 こちらのお屋敷も戦術の伊藤伝右衛門邸と同じく、筑豊炭田等の経営で富を築いた蔵内次郎作の邸宅として建てられたもので、広い母屋と立派な庭園は実に見事です。
 作中では夏目や的場さん、名取さんが、儀式を執り行ったりそれを邪魔するあやかしを追ったりして広い屋敷のあちこちを走り回っていましたが、モデルとなったこのお屋敷もかなり広く、その雰囲気が存分に話に活用されている感じでした。ほとんどのカットで左右反転された写真を元に背景画が描き起こされていますが、場所ごとに微妙に差違のある廊下の天井などかなり細部まで描き分けられていているようでした。あまりにもカット数多く、全カット撮ろうとするとキリがなかったのでほどほどのところでやめときましたが、それでも写真が山ほどあるので、雰囲気が伝わりそうなものをひたすら並べていきたいと思いますw

57


旧藏内邸の庭園。写真は左右反転しています。 (撮影日:2025.03.31)

58


大玄関と、その脇から庭園へ続く門を写したカット。上手く両方を収めたアングルで撮れなかったので門の側だけ紹介します。これも左右反転。 (撮影日:2025.03.31)

59


大玄関。これも後ろの木との位置関係を考えると反転されていると思います。 (撮影日:2025.03.31)

60


園側の様子。石灯籠まで完全に一致するところは無さそうでした。 (撮影日:2025.03.31)

61


庭園から見た母屋。なんかレンズめっちゃ汚れてるの気づかず撮ってた… (撮影日:2025.03.31)

62


室内の様子もとても良く一致しますが、ことごとく左右反転されています。一見左右あまり関係なさそうな欄間を写したこの構図も反転されています。 (撮影日:2025.03.31)

63


的場さんが夏目と名取さんに話をしていたのはおそらく応接間。3月訪問だったため雛飾りの展示がされていました。ここも左右反転です。 (撮影日:2025.03.31)

64


的場さんの背後の床の間も左右反転だと一致します。 (撮影日:2025.03.31)

65


大広間の一角。これも左右反転。 (撮影日:2025.03.31)

66


大広間を引いた構図で。これも左右反転です。 (撮影日:2025.03.31)

67


廊下の様子。場所により天井の形が異なり、ここは弓のように反った形をしています。これも反転。 (撮影日:2025.03.31)

68


同じ場所をアップで。反転。 (撮影日:2025.03.31)

69


反対向き。奥の障子や欄間、照明器具など細かいところも一致しますが、やはり左右は反転されています。 (撮影日:2025.03.31)

70


また別の廊下。ここは板張りですね。例によって反転です。 (撮影日:2025.03.31)

71


硝子戸越しに庭園を眺める構図。建築当時このサイズの板ガラスは貴重だったはずです。これもやっぱり反転すると奥の建物との位置関係などが合いそうです。 (撮影日:2025.03.31)

72


茶室の丸窓。これはパーツだけ一致する感じ。作中ではこの近くに少し不気味なお面が飾られていましたが、さすがにそれはありませんでした。 (撮影日:2025.03.31)

73


軒下の吊り灯籠 (撮影日:2025.03.31)

74


さらにまた別の廊下。ここは天井が三角形の「船底天井」タイプ。(このカットは正確にはこの写真の場所じゃないかも) (撮影日:2025.03.31)

75


ここの天井は片側にのみ傾斜がついた片流れ天井というヤツですかね。これは反転しないでも合うかもしれないし、180度反対側を撮って左右反転なのかもしれない…?(撮ってるときはこの辺りからもはやなんだか分からなくなっていましたw) (撮影日:2025.03.31)

76


大玄関。ぱっと見左右対称な構図ですが、靴箱の位置を見比べるとやはり反転した写真が使われています。 (撮影日:2025.03.31)

77


この場所そのものでは亡いですが、分かれ道のある廊下の様子。作中での描写の通りかなり広いお屋敷でした。 (撮影日:2025.03.31)

78


(撮影日:2025.03.31)

79


撮り忘れたので雰囲気の似た別の廊下で代用…作中の通り平らな廊下もありました。天井の屋根のバリエーションありすぎなのですが、作中でもキッチリ再現しているのがまたすごいです。 (撮影日:2025.03.31)

80


以下、雰囲気で何枚か。 (撮影日:2025.03.31)

81


(撮影日:2025.03.31)

82


(撮影日:2025.03.31)

 屋敷と庭園だけでなく、その周辺の景色も旧藏内邸の周辺に実在しました。

83


藏内邸正面の鳥居前から、目の前の川を見た構図 (撮影日:2025.03.31)

84


藏内邸脇の景色 (撮影日:2025.03.31)

85


藏内邸前の石橋も登場しています。これもお屋敷とセットで造られたものだとか。 (撮影日:2025.03.31)

86


(撮影日:2025.03.31)

87


(撮影日:2025.03.31)

88


(撮影日:2025.03.31)

89


(撮影日:2025.03.31)

参考リンク旧藏内邸ホームページ

ページ上部へ戻る

更新履歴
初回記入:2025.12.01