バケモノの子 舞台探訪(聖地巡礼)
探訪日:2015/06/06、2015/06/07(予告編)、2015/07/11(公開後1回目)、2015/07/12(公開後2回目)、2015/07/26〈公開後3回目、代々木追加撮影〉、2015/11/01(渋谷区庁舎内部)、2016/03/31(渋谷夜桜カット)、2016/08/17(長崎・川棚
2015年7月公開の細田守監督よる劇場アニメ「バケモノの子」。これまでも「時をかける少女」(2006年)では都内各地、「サマーウォーズ」(2009年)では長野県上田市、「おおかみこどもの雨と雪」(2012年)では富山県上市町と、実在の場所を舞台にした物語を作り続けてきた細田監督ですが、今回監督が舞台に選んだのは東京の「渋谷」。「時かけ」で都内を舞台としたことはあったとは言え、細田作品として強く印象に残る舞台はやはり「サマウォ」の上田や「おおかみこども」の富山などの田舎の風景ではないかと思いますが、今作ではそのイメージから一転、日本を代表する大都会がメインの舞台に据えられました。
公式サイトの監督インタビューからも窺える通り、明確に意図をもって舞台とする場所を選ぶのが細田監督の作品作りにおける特徴の一つ。であるならその舞台を実際に巡ってみれば、ただ作品を見ただけではわからない何かを感じられるかもしれない──ということで、今回も過去の作品でやったのと同じように、作中に登場した渋谷の街をくまなく歩き、キャラクター達と同じ目線で渋谷の街を見ていきたいと思います。
2016.08.19更新 渋天街で熊徹と九太が剣の稽古をしていた場所のモデルとなった長崎県の片島魚雷発射試験場跡に行ってきたので写真を追加しました。こちらから。
「バケモノの子」登場地点概略
人間界とバケモノ界、二つの世界を股にかけた物語が繰り広げられる「バケモノの子」。人間界側の舞台は東京・渋谷のようですが、渋谷と言っても結構広い。しかも渋谷駅周辺の「いわゆる渋谷」だけでなく、幡ヶ谷や代々木公園なども含めた渋谷区全域が舞台となっています。そこで本頁では、渋谷のどの辺りが登場したのかをざっくりまとめて紹介するところからはじめたいと思います。
- ◆ハチ公前交差点
- 皆さんご存じ、渋谷と言えばこの景色。渋谷駅ハチ公口の前にあるスクランブル交差点は当然登場します。作品のキービジュアルは3点が公開されていますが、人間界バージョンは2パターンともここでした。予告編の映像中でもこの交差点を写したカットがいくつも使われるなど、渋谷を象徴する景色として多用されていました。
- ◆渋谷駅南口
- ハチ公口は渋谷駅の北端部にありますが、その反対側にあたる南口周辺は雰囲気がだいぶ変わり、人通りもそれほど多くない「裏」っぽいイメージのあるエリアです。予告に何度も登場している主人公「九太」とバケモノの「熊徹」が出会ったのもそんな「裏」の渋谷でした。
- ◆宮益坂下
- こちらは再び駅の北側、ハチ公口とは山手線の線路を挟んだ反対側にあたる交差点周辺です。この辺りも、ハチ公側とはちょっと違った雰囲気ではありますが、繁華街として賑わいを見せているエリアです。現在東急百貨店東横店の解体とその後の再開発を実施中。作中でも工事中の様子が描かれていますが、数年以内に景色は大きく変わる予定です。
本編では一郎彦の鯨が引き起こした大爆発が起きるシーンで登場します。
- ◆渋谷駅東口
- 地下鉄銀座線が遥か頭上を通り、高層ビル「ヒカリエ」などが立つこのエリア。こちらは比較的落ち着いた感じの商業エリアとなっています。予告編の時点から1カットだけ登場していましたが本編でもこの1つで終わりでしたw
なおこの通路の先にある「ヒカリエ」では本作を初めとする細田監督の作品を題材にした企画展「バケモノの子展」が開催されています。〈2015年8月30日まで〉
- ◆センター街
- ハチ公前交差点のSHIBUYA TSUTAYAと隣の本屋「大盛堂書店」の間に延びるのが、文字通り渋谷の繁華街の中心的存在である「センター街」です。2011年以降は「バスケットボールストリート」という名称も付けられていますが、一般には「センター街」の名前の方が未だに通りが良いですかね。渋谷の繁華街の中心だけあって昼夜問わず常に人であふれかえっていますが、本作中ではここでバトルが行われ大騒動になりますw また、映画冒頭、九太がチコと出会った場所もセンター街の裏路地でしたし、渋天街への入口もこの通りにありました。
- ◆代々木体育館・代々木公園
- 渋谷の繁華街を通り抜けた先、隣の原宿駅の近くまで行ったところに有る国立代々木競技場、通称代々木体育館とその先の代々木公園。このあたりも渋谷区の範囲内です。スポーツはもちろん有名アーティストのライブイベントなども行われるので行ったことある方も多いかも知れません。
作中では蓮と楓が一緒に勉強するシーンで公園側のけやき並木が、ラストの一郎彦とのバトルシーンで代々木第一体育館南側のプロムナードがそれぞれ登場しました。なおプロムナードの方は自由に出入りできるのが8時~21時の間のみとなっていますので、訪問される方はご注意下さい。
- ◆幡ヶ谷・六号通り商店街
- 新宿から京王新線で二駅という立地なので新宿区なのでは?と思われるかも知れませんが、この辺りもまだ渋谷区です。蓮が父親と再会を果たしたのがこの商店街。父親の家は特定出来ていませんが、おそらくこの近くに住んでいるものと思われます。
- ◆渋谷図書館、渋谷氷川神社
- 渋谷駅から南に徒歩15分ほど行った辺りに「渋谷区東」という住所があるのですが、そこにある渋谷図書館と渋谷氷川神社が九太と楓のシーンでよく登場していました。繁華街のイメージが強い渋谷ですが、この辺りは閑静な住宅街となっており、神社も立派な森を有しているなど、渋谷のすぐ近くとは思えない街並みが広がっています。
- ◆長崎県・片島魚雷発射試験場跡
- 渋天街で熊徹と九太が剣の稽古をしていた場所にもモデルがあります。これは渋谷ではなく、長崎県川棚町にある「片島魚雷発射試験場跡」という廃墟がモデルになっています。
渋天街の景色はこのほか、モロッコのマラケシュという街をイメージの参考にしたとパンフレットなどで述べられていますので、似たような景色がそのあたりにあるのかもしれません。
キービジュアル
始めに映画のポスター等に使われたキービジュアルの背景から紹介。あまりにもおなじみの景色だと思うので細かい説明は不要かと思いますがw、子供時代の九太&熊徹の第1弾イラスト、高校生になった九太&楓の第2弾イラスト、どちらも渋谷駅ハチ公前のスクランブル交差点の風景が使われています。
まずは第2弾の方から。ハチ公前広場の喫煙所がある辺りからスクランブル交差点を見た構図。正面にあるTSUTAYAのビルに向かって横断歩道が延びる構図となって見栄えがするのか、外国人観光客がよくこの構図で写真を撮っているを見かけます。
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作品イメージを伝えるキービジュアルって事で、パースなどが多少デフォルメされて描かれているのかも。カメラでは完全に同じ雰囲気を再現できませんでした。
つづいて、本作の制作発表と同時に公開されたキービジュアル第1弾の方。子供時代の九太と熊徹が夜の渋谷に立っているこのイラストも同じくハチ公前のスクランブル交差点ですが、しかしこのイラスト、よーーく見てみると実は第2弾ビジュアルとは風景が微妙に異なることが分かります。昼と夜の違い、とかそう言うことではなくてw、たとえばTSUTAYAのビルの左奥にある看板。第2弾キービジュアルでは「F21」の文字が書かれていますが、第1弾キービジュアルの方では同じ場所に「HMV」と書かれています。(公式サイトのストーリー紹介頁の背景が第1弾のイラストですのでそこで見るのが分かりやすいかも。)上に掲載した写真を見ればお分かりかと思いますが、2015年現在の実際の渋谷にあるのは「F21」の方。ではなぜ第1弾の方では敢えて「HMV」に変わっているのかというと、これはスポンサーの都合で現実の景色から描き変えられているため……とかそういうわけではなくw、どうやら細田監督のこだわりがここに現れているようです。すなわち、これらの背景は九太の年齢に合わせてわざわざ描き分けられたものである、ということです。
映画の公開日より遡ることおよそ5年前、2010年8月までは本当にHMVの店舗がこの場所にあり、イラストと同じ看板が実在していました。成長した九太(蓮)が渋天街から戻ってきたのは映画公開と同じ2015年の夏なので、第2弾キービジュアルでは今と同じ風景を、渋天街へと旅だった9歳の頃の九太が描かれた第1弾キービジュアルでは2006年の景色が描かれていることになります。劇場パンフレットのインタビューによると、2006年の渋谷の風景は当時を知る人への聞き込み調査や外国人観光客のブログを片っ端から漁るなどして必死でかき集めたとのこと。その成果は本編にも反映されているようで、幼い頃の九太が渋谷センター街を走るシーンでは、2015年現在は閉店してしまった店の看板が描かれているところもありました。
ここまでして細かい背景を描き変えることで、九太が成長した姿になって戻ってくるまでにはちゃんと数年の時間が流れているんだ、ってことをより強調して、より現実味を持たせたい、というのが細田監督の意図といったところでしょうかね。背景画ひとつからも監督のこだわりが見えた気がしました。
そんな数年前の景色ですが、たまたま渋谷HMVが営業中だったころのこの場所の写真を撮っておりましたw さすがに若干撮影位置は異なりますが、問題のHMVの看板は見えますので折角なので掲載したいと思います。
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2007年1月3日撮影のスクランブル交差点。HMVの看板が見える。
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Aパート
ここからは映画本編に登場したカットを登場順に紹介していきたいと思います。既に絵コンテ集が書籍として発売されていますので、シーン、カットの番号やパートの区切りなどは全てそちらに準拠して紹介しております。お持ちの方はそれと合わせてこの記事を読んでいただけるとよりわかりやすいと思いますし、そうでないかたも実際見られた映画本編を思い出しながら順に追って頂ければと思います。
さてまず映画最初のパートから。炎の演舞が印象的な導入部から映画がスタート。ひとりぼっちになった主人公・蓮が渋谷の街でバケモノ・熊徹と出会い、そして異世界「渋天街」に行きその熊徹の弟子になるところまでがAパートとして区切られています。
このパートでは九太(蓮)が9なので舞台は2006年の渋谷。先ほども書いた通り一部店の看板が2015年現在はないけど2006年当時はちゃんとそこにあったものが描かれているシーンもありました。このパートでの主な登場地点はスクランブル交差点からセンター街周辺と、渋谷駅南側の高架下。後者は九太が初めて熊徹&多々良と出会った場所ですし、前者も渋天街への入口となるビルの隙間があったりと、どちらも九太にとって「運命の場所」と言える非情に重要な場所になっています。
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シーン2カット1。Q-FRONT(TSUTAYAのビル)にきらめく広告映像
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シーン2カット2。ハチ公前広場の夜景。マークシティと銀座線を連絡する通路の窓から見た構図です。
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シーン2カット3。同じくスクランブル交差点夜景。
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シーン2カット4。交差点に佇む蓮。
家出少女が警官に補導されているのを見てなのか、蓮は人混みをかき分けセンター街の方へ逃げていきます。
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シーン2カット10。センター街の街灯に取り付けられた街灯監視カメラ。
コンビニで食べ物を買った直後、逃げ込んだ人気の無い路地。ここで蓮はチコと初めて出会います。センター街と道玄坂との間にある裏路地で、ファーストキッチンとふらんす亭のあるビルの間を入ったところです。ふらんす亭の看板は作中では「牛角食堂」になっていましたが、2006年当時は確かにその場所にあったようです。
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逃げ込んだ暗い路地。
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チコと初めて出会ったカット。
母親を亡くし、本家に引っ越す準備をしている回想のシーンを挟んだ後、再び渋谷の街を一人歩くシーン。ここで蓮は道玄坂の109側歩道を歩いています。
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シーン4カット1。109の脇。
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シーン4カット2~8辺りで背景に映る、109のちょっと先の景色。
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シーン4カット9。「大嫌いだ…大嫌いだ……大嫌いだ!!」と叫ぶ蓮。作中では3枚とも真っ白の看板として描かれており、蓮の「心の闇」を映す鏡になっていました。
シーン変わって渋谷駅の南側、国道246号線がJR渋谷駅の下を通り抜けるガード下。蓮がバケモノ・熊徹と出会い物語が始まるのはこの場所です。同じ渋谷駅でありながらハチ公周辺とは全く違った趣で、夜になると人通りもまばらなこの歩道。作中に描かれているとおりに薄暗く、壁には一面の落書き、駐輪場にはおびただしい数の自転車、という風景が広がっています。
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予告でも登場した高架下の自転車置き場。
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九太と熊徹が出会い物語が始まる場所。得体の知れぬ「バケモノ」が渋谷にいるとしたらこういう裏の場所なんでしょうね。
※なおこの辺り、実際行ってみたら分かったのですが、現在ホームレスの生活の場となっているようです。訪れる際は無用なトラブルを避けるためにも一定の配慮が必要になると思われます。
この後再びセンター街方面に戻た蓮は、補導しようとした警官を振り切ってセンター街を走り回ります。途中経路も絵コンテを見るときちんと現実の位置関係に即して設定されているのですが、いかんせんこの通りは人が多すぎてきっちりアングルを合わせて写真を撮るのは厳しいのでここは省略します。
さて警官から逃げるウチにたどり着いたとあるビルとビルの間。ここで蓮は先ほど出会ったバケモノたちの姿を一瞬目にします。そして二人を追いかけ、彼自身もその隙間へ入っていくと…その先はバケモノの世界「渋天街」に繋がっているのでした。
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蓮が人間界の渋谷からバケモノ界の渋天街へ旅だったビルの隙間はおそらくここがモデル。
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渋天街
ビルの隙間からつながる迷路を抜けると、たどり着いたのはバケモノの世界。そこに住む人々(バケモノ)はもちろん、街並みの雰囲気も現代日本とはまるで別世界ですが、実は二つの世界は表裏一体。蓮(九太)がたどり着いた「渋天街」は人間界の「渋谷」と同じ位置にあるという設定になっているそうです。この架空世界は、地形や主要スポットの位置関係は現実の渋谷と一対一で対応させて作り上げられているそうです。パンフレットや関連書籍でも解説されていますが、熊徹vs猪王山の決闘が行われた広場はハチ公前広場とスクランブル交差点付近に対応しており、そこから見える丸い塔(給水塔という設定)は渋谷109。熊徹の家はその奥にあり、道玄坂みたいな坂道を登って家に帰るシーンが描かれている、など、渋谷の地理を頭に入れて見るとまた違った楽しみ方ができるようになっています。
さてこの渋天街の景色、よく見ると渋谷の街で見たことあるようなモチーフが目に付きます。街並み全体のイメージはモロッコやブラジルの風景から持ってきているそうなので異国情緒溢れる感じになっていますが、細部には現実の渋谷に実在する(orした)ものがモデルになった建物などが紛れています。
一番わかりやすいのは「渋天街の門」でしょう。この門自体はセンター街入口、TSUTAYAの脇にあるゲートに対応した位置にあるそうですが、ネオンサインのデザインはスクランブル交差点に面したドラッグストア「三千里薬品」のネオンサインがモデルになっています。場所柄見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
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「渋天街」ネオンサインのモデルとなった三千里薬品の看板
渋天街の街並みが渋谷と似た景色になっているところもあります。それがこちら。熊徹の家へ向かう途中にある坂道と階段のモデルは道玄坂の繁華街の中にあります。多くの建物は異国風の見た目で描かれていますが、細かい構造は実はここに写っている建物と同じになっています。右端にある「麗郷」という中華料理屋の建物は、煉瓦造りの外観がほぼそのまま作中に登場しています。(絵コンテを見たらもろに「『麗郷』の坂道」と書かれているページもありましたw)
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熊徹の家へ向かう途中の道のモデルとなった道玄坂の坂道
さらに、これはストーリー上特に注目されなかった場所なので分かりづらいかも知れませんが、今はもう取り壊されてしまった旧東横線渋谷駅のような建物も描かれていました。丸みを帯びた逆三角形が連なる独特の形状と同じ構造の建物が、渋天街の広場から見える景色の中に描かれています。(話のラスト、九太凱旋を街中で祝うシーンの冒頭にある渋天街を俯瞰するカットとかが一番わかりやすいかも知れません。)
この旧東横線渋谷駅がモデルらしき建物の近くにはドーム状の物が乗っかった建物も描かれており、これはおそらく現在の「ヒカリエ」の位置にかつて存在した東急文化会館の屋上にあった五島プラネタリウムのドームに対応するものです。(数年前に出来た渋谷区立のプラネタリウムとは明らかに位置が異なります。)もしかすると渋天街の景色は、10~15年ぐらい前の渋谷に対応している、という設定なのかも知れません。
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渋天街の風景の中にも描かれている旧東横線渋谷駅。2012年10月撮影ですが、2015年時点では取り壊されています。
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熊徹と九太の稽古場~片島魚雷発射試験場跡
渋天街のシーンからもう一つ。熊徹と九太が剣の稽古をしているのは、中央に木が生えていて四方を壁に囲まれた場所でしたが、この場所にはモデルになった場所があります。それがこちら、長崎県は佐世保市のお隣、川棚町にある「片島魚雷発射試験場跡」です。大正時代から太平洋戦争終結までの間、佐世保にある工場で製造された魚雷の発射試験を行っていた施設ですが、終戦後放棄され、現在は完全に廃墟となっています。
このシーンのモデルとして使われているのは試験場の建物部分で、作中で描かれている姿と同様、屋根はなくなり、床の真ん中からは大きな木が一本生えています。壁のコンクリートも一部が剥がれており、放棄されてからの時間の経過を感じさせます。実際に行ってみると廃墟という印象があまりに強く、作中のシーンから受ける印象とはちょっと違ったふうに感じましたが、よくよく見比べてみると細部まで同じで、確かにこの場所がモデルで間違いないようす。日常から離れたこの風景はファンタジー世界であるバケモノ界の風景としてぴったりだったから、細田監督はこの場所をモデルに選んだのかもしれません。
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よく出てくるアングル。建物跡の中から中央の木を正面に見た構図です。広角レンズがないとちょっと入りきりません。
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左手側。百秋坊と多々良が稽古の様子を見物してたのはこの辺ですかね。
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右手側。作中で出入りに使ってたのはこっち側?
以下作中カットではないですがこの廃墟の様子を紹介。
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木の後ろ側から。
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建物跡外観
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海に突き出た発射場主塔跡
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少し離れた場所にも遺構があります。
この「片島魚雷発射試験場跡」は川棚町教育委員会によって管理されているようですが、特にゲートなどはないので誰でも自由に出入りできます。建物跡についても中に入って問題はありません。(ただし海に突き出たところにある主塔については崩落の危険性があるため立入禁止となっていました。)
アクセスはJR大村線・川棚駅から車で10分、徒歩の場合JR大村線・小串郷駅から約40分、西肥バス大崎公園入口バス停から約25分です。そこそこ距離がありますが、とても風光明媚なところなので行ってみて損はないかと思います。
詳しくは川棚町のホームページをご覧ください。
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国道から遺構へ行く途中にある三越郷集落の景色
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Bパート
蓮が熊徹の弟子・「九太」として渋天街で暮らし始めてから9年の月日が経ったある日、九太は不意に現実世界への通路を抜け、人間界の渋谷へと戻ってきます。こちら側でも同じく9年の月日が流れており、まるで異世界に来たようで戸惑う蓮は、立ち寄った図書館で自分と同じ年頃の少女・楓と出会います。
これらシーンは桜が満開となった2015年春の渋谷が舞台。以下の場所が登場しています。
1カット目、九太が渋谷に戻ってきてすぐ目にした光景として描かれたのはおなじみスクランブル交差点の人混み。Aパートのシーン2カット3と全く同じアングルです(但し時間帯は夜と昼で異なる)。敢えて同じポジションから見た構図を使うことで逆に変化を強調する、細田監督お得意の「同ポ」が炸裂しているのがこのカットですw
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シーン58カット2。シーン2カット3と同ポだが時間帯は昼。
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シーン58カット3。シーン2カット2と同ポのようでそうではなく、撮影地点は同じビルのワンフロア下、JR玉川改札から京王井の頭線のりばへ向かう途中の窓から見た構図でした。
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シーン58カット4。東口の首都高高架下に張り巡らされた歩道橋。背後に見えているのは渋谷駅とヒカリエを結ぶ連絡通路です。両者は実際にはそこそこ離れていますが、歩道橋の南端部あたりから望遠レンズで撮影するとこの通り、すぐ後ろにあるように描かれた風景を再現できました。
突然人間界に戻ってきてしまって困惑している様子の九太(蓮)が向かったのは図書館。ここで今後の彼の人生を大きく変えるきっかけとなる楓との出会いを果たします。
この図書館のモデルとなったのは渋谷区立渋谷図書館。渋谷の繁華街から少し外れた住宅街の中にあるこぢんまりとした図書館です。監督達はここもしっかりロケハンをされたようで、なんと作中に出てきた書架に並ぶ本もほぼ一致していました。九太が手にしたメルヴィルの「白鯨」も作中に描かれているのと同じ装丁のものがありましたし、隣の楓が手に取った本も同じものがありました。ちなみに、現地の書架の並びと関連書籍に載っていたこのカットの画像を見比べてみたところ、この時楓が手にしていたのは「世界文学大系58 カフカ(筑摩書房刊)」になるようでした。
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図書館入り口。営業終了後の門が閉まった状態は後のシーンでも登場します。
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楓がいじめっ子達に襲われているカット。
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その楓を助けに蓮が現れたカット。
図書館のシーンの直後、楓が蓮に助けてもらったお礼を言うシーン。実際に図書館の近くにある、渋谷氷川神社脇の駐車場です。神社自体も後のシーンで登場します。
なおこの周辺は閑静な住宅街の中ですので訪問の際はご配慮下さい。
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渋谷氷川神社脇の駐車場。作中では夜景ですが実際撮ってみたら暗すぎてぶれてしまったので昼の写真を掲載。
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こちらは何とか撮れた夜のカット。予告でも出てましたね。
(2016.04.01追加) 映画の公開が夏だったので8か月も空いてしまいましたが、公開後初の桜の季節がやってきたので夜桜のカットを再現してみました。渋谷氷川神社のこの場所には確かに桜の木がありますが、作中に描かれている位置とは少し違う場所にあるので構図を完全に再現することはできませんが、雰囲気は伝わりますかね?
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前回の反省を活かし今回は三脚とレリーズ持参したので夜桜もちゃんと撮影できましたw
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桜のある位置は作中と実際とでは左右が逆になっているイメージですかね。
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二人が話してるカットのイメージで。
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おまけ。広角レンズで夜桜を見上げてみました。
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Cパート
人間界では楓に勉強を教わり、バケモノ界では引きつづき熊徹と剣の稽古という二つの世界を股にかけた文武両道生活を始めた九太。人間界の知識を吸収するにつれ行動範囲も広がっていき、このパートではいろいろな場所が登場しています。とは言っても、「渋谷区から一歩も出ない映画」と監督が明言しているとおり、全てのスポットは渋谷区内に存在していますw
Cパート最初は先のシーンから引きつづき図書館と近くの渋谷氷川神社を行ったり来たり。楓と共に勉強しながらすごい勢いで知識を身につけていく蓮の姿が描かれます。
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季節は春から夏になり、短期間でどんどん知識を伸ばす蓮を見て楓は「大学行く気ある?」と誘います。そのシーンの舞台となったのは代々木体育館脇のけやき並木。渋谷の繁華街と代々木公園を結ぶ道で、木漏れ日溢れる明るい雰囲気を求めて多くの人がやってくる場所です。蓮と楓の二人が腰掛けて勉強したり話したりしていたのはNHKホールの脇あたり。後のシーンで登場するのも同じ場所です。
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シーン71カット1。代々木公園のケヤキ並木。奥には代々木体育館が見える。
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シーン71カット2。NHKホールの脇あたり。このカットと次の2枚は同じシーン71で何度も使われます。
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大学に行くため「高認」(旧大検)の手続きしようと楓に連れられ蓮が向かったのがこの渋谷区役所。先ほどのけやき並木のすぐ手前に位置しています。
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渋谷区役所。南側から撮影。
この区役所、映画公開当時は現役の渋谷区役所総合庁舎でしたが、老朽化に伴う立て替えの為2015年10月下旬を以て閉庁し、取り壊されてしまうことになりました。区役所機能の仮庁舎への移転後の10/25~11/3の期間「さよならイベント」として「渋谷のたまご さよなら区庁舍 SHIBUYA EGGS SAYONARA CITY HALL」というアート展示イベントが実施されており、中の写真を撮れる機会がありましたので取り壊し前の記録も兼ねて作中に登場したモノを紹介したいと思います。
まずは楓と蓮が見ていた案内板。細田監督お得意の「同ポ」で何度か出てきたカットでもあります。
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区総合庁舎案内板
ここに掲載したのは2階の案内板ですが、実際に出てきたのは絵コンテの記述によると1階のモノと思われます。イベント公開期間中はその場所に案内板はなかったのですが、見比べてみると背後の窓とかも一致するように見えます。
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1階ロビー。イベント公開中は案内板がなくなっていました。
住民票の請求をした窓口は2階の7番。「各種証明書受付」の文字もそのままでした。
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イベント公開中はカウンターは撤去済みでアート展示スペースになっていたのでイメージ違いますが、頭上の窓口番号はそのまま残っていました。
区役所でいとも簡単に判明した父親の所在。その住所を頼りに蓮は父親に会いに行くことを決意します。
そんな蓮の父が現在暮らしていたのは幡ヶ谷駅周辺。京王線で二駅と、新宿駅の方が渋谷駅よりよっぽど近いという場所ですが、ここも渋谷区内です。蓮がおよそ10年ぶりに父親と再会を果たしたのは駅からほど近い「六号通商店街」。店の名前も見た限り全て実名でそのまま登場しているようでした。
この周辺は他に父親の住むマンションや、そこへ向かう途中に通る工事現場前の道などが出てきますが、いずれもまだ特定できていません。
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六号通り商店街の入口
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蓮が前を通ったブックオフ
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二人が感動の再会を果たしたのは「靴のアカサカ」の前。
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以後この店周辺をいろんなアングルで。絵コンテでいうとシーン74のカット2~12あたりです。
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シーン変わって楓の学校前。エンディングテロップにモデルとなった高校の名前がクレジットされていましたが、このページでは敢えて書かず伏せておきます。学校ですので写真もあまり撮っていません。
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シーン90カット5。予告にもあったこのカットは楓の学校の前でした。
この後熊徹に人間界での勉強のことがバレ、人間界に戻り再び父親と会うシーンへと続きます。人間界でのシーンは再び幡ヶ谷六号通り商店街ですが、ほとんどが「同ポ」なのでここでは割愛。父親との接し方も分からなくなり闇雲に渋谷の街を走り回っていたら、幼い頃の「闇」が再び九太の前に姿を現すシーンに移ります。このシーンはもちろんAパートの幼少期と同じ道玄坂です。幼い頃「大嫌いだ」と呟いた心の闇の幻影を見たのも同じ広告看板です。作中ではその看板の反対側が鏡張りのビルになっていて、そこにも過去の幻影が映る、という演出がされていましたが、そのビルは実在しない架空の建物です。
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車が行き交う道玄坂の夜景。シーン83カット1のイメージで撮ってますが、カメラの位置がもっと高いような?
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シーン4カット9と同じ、蓮の「心の闇」を映した看板。
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作中では鏡張りのビルにこの辺りの景色が映り込んでいる感じ。
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シーン83カット15。過去の幻影が今の自分と同じ菅谷なり驚愕する九太。
完全に混乱してしまった蓮は楓の待つ図書館へ。
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そして渋谷氷川神社脇の駐車場に場所を変え、楓に心情を吐露します。
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初めて出会った時と同ポで。
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楓のビンタで我に返った蓮。この後渋天街に戻り、熊徹vs猪王山の宗師の座を賭けた戦いを見届けます。人間界の景色が次に出てくるのはDパート、クライマックスのバトルシーンになります。
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Dパート
物語もいよいよクライマックス。渋天街の闘技場で己の内に溜め込んだ闇を暴走させてしまった一郎彦を止めるため、九太は再び人間界へ。大都会・渋谷のど真ん中で繰り広げられる迫真のバトルシーンが始まります。
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蓮からの呼び出しで夜にもかかわらず抜け出してきた楓の住むマンション。作中で出てきたアングルとは違いますが多分これです。
一郎彦とのバトルの舞台となったのは渋谷の中心・センター街。このシーンは設定上2015年夏ということのようで、通りの至る所に七夕飾りが付けられている光景が描かれていました。これは実際に毎年行われているもので、7月最終週頃から8月7日まで、七夕祭りで有名な仙台で作られたくす玉と吹き流しが通りのあちこちに飾られています。2015年は7月22日(水)~8月7日(金)の期間でしたので、この間のどこかの日でこのシーンのできごとが繰り広げられた、ということになるのかと思います。ここに紹介する写真もその期間中に撮ってきたものです。
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シーン102カット1。七夕飾りが付けられたセンター街の門。
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蓮が楓に「白鯨」の本を託した場所
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一郎彦がやってきた方向
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楓の手を引き走る蓮
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バーガーキングの前を通り越し…
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IT'S DEMOを過ぎた辺りで反転、蓮も刀を手に取ります。
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「沖縄そばやんばる」の角で一郎彦と蓮が激突!
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しかし一郎彦の激しい剣戟に圧され…
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反撃するも…
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吹っ飛ばされてしまう蓮。
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IT'S DEMO前の七夕飾りにぶつかって地面に転がります。
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再び楓と共に走って逃げる蓮。
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大勢の通行人に「逃げろ!」と声をかけながら道玄坂のフルーツパーラー西村前辺りを通過。
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109前に出ます。
一郎彦の作り出した鯨の怪物は、逃げる九太と楓を追ってハチ公前から宮益坂方面へ。トラックを持ち上げJRの高架に激突させ、大爆発を引き起こします。
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追ってくる鯨から逃れるために楓の機転で地下へ。
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りそな銀行前の地下ホーム入り口。このアングルは斜め向かいのビックカメラ前から望遠レンズで見たもの。
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二人が駆け下りた階段。
二人を見失った鯨は宮益坂上交差点あたりを徘徊。
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金王坂の歩道橋からみた宮益坂上交差点
駅前の大爆発で軒並み「運転見合わせ」と表示されている渋谷駅発着各線の案内。順に銀座線、JR各線、半蔵門線、副都心線のものでした。
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銀座線の発車案内
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JR各線の発車案内(ハチ公改札)
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半蔵門線の発車案内
唯一動いていた副都心線に乗り込む二人。
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副都心線の発車案内
なお二人が乗り込んだのは20:40発各駅停車新宿三丁目行きの5号車。車両は内装がちらっと映っただけなので自信ないですが、おそらく東急の5000系か5050系(4000番台以外)と思われます。
渋谷駅の隣、「明治神宮前〈原宿〉」駅で運転打ち切りになってしまったので下車した二人。人気の無いところとして選んだのか、代々木第一体育館脇のプロムナードへとやってきます。そしてそのまま一郎彦との最終バトルへ。奇しくもここは渋天街の闘技場と同じ場所。熊徹vs猪王山の戦いと九太vs一郎彦の戦いは違う世界の同じ場所で行われたことになります。
この場所でのシーンはラストバトルだけあっていろんなアングルにめまぐるしく切り替わるので、大体の順番で大まかに紹介します。
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追いついた一郎彦が再び鯨の怪物を呼び出します。
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ピンチに陥った九太の元に渋天街のメンバーが熊徹を携え登場。体育館の屋根の上から九太の元に「熊徹」を届けます。
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九太と熊徹、二人の力に打ち負かされた鯨は最後、断末魔のような叫びを上げて消えていきます。
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渋谷の街中にある「バケモノの子」
最後に、渋谷の街中で見かけたバケモノの子ポスターを紹介します。かなりあちこちにありましたので探さなくても目に付くと思いますw 街中のポスターも「バケモノの子」の舞台としての渋谷をもり立ててくれていました。
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本編にも出てきたアングルで広告映像をw
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以上、「バケモノの子」の舞台紹介でした。
渋谷の街並み、特にハチ公前のスクランブル交差点などは、全世界規模で認知されている「日本を代表する景色」の一つといっても過言ではないかと思います。故に多くの人にとっては特に新鮮みのない、見慣れた景色なのかも知れません。しかし今回紹介した場所からもわかる通り、ハチ公前だけが渋谷ではありません。薄暗いガード下も、昔ながらの住宅街も、あるいは大きな公園も、どれも「渋谷」の一部です。アニメ作品の「聖地巡礼」というと地方都市など大都会から離れた、多くのファンにとっては「非日常」の場所が特に人気を博している印象がありますが、そうではない「日常」だと思っていた風景の中にも、それまで知らなかった「非日常」が潜んでいるかもしれない。そんなことを思いながら渋谷の街を歩いてみると、今までとは違った風に景色が見えてくるかもしれません。またそれによって、「バケモノの子」という作品もまたひと味違った目線で楽しめるようになるかもしれません。
少なくとも首都圏在住者にとって渋谷は行きにくい場所ではないと思うので、この作品を見る前に、そして見た後に、渋谷の街を訪れてみると、新たな発見があるかもしれません。
更新履歴
初回記入:2015.06.25
公開後探訪分追加:2015.07.12
一部差し替え、新規カット追加:2015.07.13
コメント全面改稿、新規カット追加:2015.08.13
渋谷区庁舎内部の写真を追加:2015.11.01
渋谷氷川神社の夜桜カットを追加:2016.04.01
片島魚雷発射試験場跡の写真を追加:2016.08.19